平成10年7月3日(金)午後1時30分から、神戸地方裁判所洲本支部において、第4回目の公判(原告・被告証人尋問)が行われました。以下はそこでの被告の陳述書です。原告代理人から当日いただいたコピーをOCR作成したものですので、乱丁があるかもわかりませんので、そのつもりでご参照ください。


陳述書

一 私は、平成七年七月から五色町長をつとめています。今回、淡路五色ケープルテレピの広告放送中止をめぐり、町民の一人である山口氏から訴訟が提起されましたが、広告放送中止並びにその背景にある黒い土間題について、これまでの経緯を述べることにします。


二 黒い土問題というのは、淡路島外から島内に建設残土の搬入を認めるべきかどうかをめぐる間題です。建設残土は見た日に黒い色をしているので、黒い土間題と呼ぱれるようになったものと恩います。淡路島には昭和五一年ごろから建設残土が搬入されるようになり、これまで島内の大半の自治体で建設残土による埋立てが実施されました。しかし、平成九年三月に五色町に搬入された建設残士からヒ素が検出されたことから、建設残土の町への搬入を設めるべきか、建設残土の安全基準をどう定めるべきか等が具体的な問擾となったものです。この問題が顕在化してから、五色町としても建設残土を三○回以上も検査しましたが、安全性に間題はないという結果でした。


三 黒い土問題については、五色町内でも賛否の意見がありましたが、山口氏は反対の意見をもって活動をされていたようです。私どもでは山口氏の活動のすべてを把握している訳ではありませんが、平成九年七月二七目に烏飼地区で反対派住民の会合がもたれた際、山口氏は出席者に対し、五色町の黒い土問題への取組みかた次第では町長のリコールや町議会の解散に向けての動きをとらなけれぱならない旨発言されていたと間いています。


四 また、山口氏は、平成九年八月一四日、五色町の町長およぴ町議会の全議員に対して、いきなり「いわゆる『黒い土』問題に関するアンケートのお願い」と題する文書を送ってこられました。そのアンケートの内容は、基本的には建設残土の搬入について賛成反対いずれの立場であるかを問うものでしたが、その質間内容や表現内容からして、山口氏は建設残士の搬入問題に強く反対しておられることが分かりました。これは、私だけなく町議会の議員も同じであったと思います。しかし、五色町内には、山口氏とは違う意見の町民も多数おられましたし、私自身その方たちの意見も耳にしていました。


五 黒い土間題をめぐっては、このように賛否の意見が分かれていた折、平成九年八月二六日の午前中、山口氏と三木氏が五色町役場情報セン夕−ヘ来られました。山口氏らは当初十一チャンネルでの広告放送を希望されていましたが、最終的には一チヤンネルでの広告放送の申込みされました。そこで、山口氏の対応にあたっていた職員は、五色町企画情報課長に報告し課長の了解を得て、一且は申込みを受理したようです。そして、午後三時頃から午後五時頃までの間、番組の合間に本件広告放送がなされたと聞いています。ただ、私はこのとき来客があったために、山口氏からの申込みがあったことも、本件広告放送がなされたことも知リませんでした。


六 午後五時頃に来客が帰られたとき、私は企画情報課長から、山口氏からの本件広告放送の申込みがあり、既に広告放送を行ったという報告を受けました。そこで、放送の内容を確認しましたところ「『黒い土』汚染間題を考える」との標題のほか、フォーラムの代表者として「山口薫」という名前が表示されていましたため、本件広告放送を続けると五色町当局の建設残土搬入についての見解に誤解をもたれる可能性があり、町攻を混乱させるおそれがあると判断し、広告放送の中止を決定しました。そして、午後五時三○分頃に企面情報課長を通じて山口氏に放送中止の決定についての通知を行い、午後五時五○分頃に本件広告放送を中止しました。この広告放送中上の決定は、直接には五色町情報センター広告放送取扱要網二条一五号を理由とするものてすが、この要網の六号と一二号の趣旨も考慮に入れました。


七 山口氏は、平成九年八月三一日に予定どおリフオーラムを開催され、私もフオーラムに出席しました。私が出席したのは、山口氏から出席の要請を頂いていましたし、出席して私の意見を直接説明したいと考えたからです。このフオーラムでは、建設残土の安全基準についての講演や、先に述ぺましたアンケート結果の報告などがなされました。私にも挨拶する機会を与えて項き「九月定例町議会て条例を制定して多くの町民が納得できるようにしたい。個人的には建設残土の搬入は望ましいこととは思っていないが、搬入を拒む理由がない。」という趣旨の発言をしました。フオーラムの出席人数は八○名から九○名くらいではなかったかと思います。


八 山口氏からは、平成九年八月二六日に本件広告放送の広告料として五○○○円をお支払い頂きました。しかし、本件広告放送は中止になリましたため、平成九年十一月二○日に山口氏に広告放送料の還付手境についての案内を差し上げました。その結果、山口氏は奥様を通じて平成九年十一月二一日に還付請求をされましたので、その日のうちに五○○○円をお返ししています。ただ、その翌日、山口氏は何故か再度五○○○円を五色町役場にもって来られ、還付は受けないという態度を示されましたので、五○○○円は役場でお預かりしたままとなっています。


九 最後に、山口氏はホームステイ先をお断りしたことを本件で間題とされていますが、このことと本件訴訟とは全く関係がありません。


平成一〇年六月一二日


(住所)

兵庫県津名郡五色町都志二〇七番地

五色町役場

(氏名)

砂尾 治