以下は平成11年11月12日に控訴人が大阪高等裁判所に提出した最終陳述書です。控訴人 代理人からいただいたコピーをOCR作成したものですので、 乱丁があるかもわかりませんので、そのつもりでご参照ください。


陳述書

            
私は、平成10年6月15日の原告陳述書の項目「7.なぜ「黒い土」問題に過剰反応するのか:町長の黒い霧」の中で以下のように指摘しました。


『(a) 初当選の取材記事(神戸新聞、平成7年7月12日(水)、同資料6)の中で町長は「土取り条例は内容が厳しく、業者が守るのは難しい。町も守らせることが出来ず、業者も守れない状態となっているので、・・・現実的なものに改正したい。」と述べています。』


このような当初の意図・動機があったが故に、就任後露骨に斎藤前町長が制定した厳しい土取り条例を廃止したり、積極的に搬入を始めた建設残土が汚染されていたのが発覚したとなるや、国の土壌環境基準・水質基準を無視して産廃取り扱い基準で建設残土を搬入できるようにするといった前代未聞の残土条例を議会、住民を欺く形で制定し、その後の2度にわたる町民の、国の基準による残土条例への改正という要求にも応じなかったのです。

その結果建設残土が五色町に大量に搬入され始め、(いわゆる暴力団関係業者を含めた)業者が大いに潤ったといわれています。事実、それら業者の中で過去3年間、五色町内でダントツの急成長、高収益をあげたのがダイニチ工業です。そのダイニチ工業について、その後以下のようなことが判明してきました。

兵庫県届け出の「建設業許可申請書」によるダイニチ工業の「土木工事」実態をみると、ダイニチ工業の土木工事のほとんどが五色町のほ場整備事業の下請け工事です。しかも、平成7年度で73.1%の1.7億円、平成8年度で82.6%の1.8億円、平成9年度で72.3%の1.5億円と全工事金額に占めるほ場整備下請け工事の比率が72%〜83%となっており、いかに建設残土を伴うほ場整備事業によって潤ったかがわかります。それを可能にしているのが、元請け業者はダイニチ工業を下請けにしないと事実上指名されないようになっているという町内の利権構造であり、ダイニチ工業オーナーとしての町長が実質的にほ場整備事業を取り仕切っているからです。ダイニチ工業の社長(砂尾町長の甥)は、「オサ(砂尾治(おさむ)町長のこと)が仕事を取って来てくれる。」と周囲に公言してはばからないそうです。

しかもすでに指摘したとうり、ダイニチ工業は砂尾治・冷子町長夫妻が100%株式保有(出資)の有限会社なのです。(砂尾治町長が1,185万円で冷子夫人が315万円)。兵庫県届け出のダイニチ工業の「建設業許可申請書」の「利益処分計算書」によると、砂尾町長夫妻は、平成8年度、及び平成9年度にそれぞれ300万円、計600万円の利益配当金を所得として得ています。また同「損益計算書」によると、砂尾久夫代表取締役及び砂尾冷子夫人取締役両名の役員報酬は、平成7年度、1,675万円、平成8年度、1,460万円、平成9年度、600万円と計上されています。

こうした事実を総合すると、「業者も守れる」行政とは、自らがオーナーの業者への利益誘導行政に他ならなかったのです。砂尾町長の行為は、実質的には「首長の兼業」に該当する可能性すらあると私には思えてなりません。確かに形の上では、民間業者の下請けになっているものの、ダイニチ工業の業務の7〜8割は上述のごとく五色町の公共ほ場整備事業からなっているのであり、自治体の事業とは独立した一私企業の業務内容とは到底考えられない異常さです。自治体の長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いと認められる程度に至っていると思われます。(地方自治法第142条参照)。昭和62年10月20日の最高裁第三小法廷では、「当該普通地方公共団体に対する請負量が当該法人の全体の業務量の半分を超える場合は、そのこと自体において、当該法人は『主として同一の行為をする法人』に当たるものというべきである」とされているのです。

 結語

今回の裁判を通じてこれまで色々な議論、法律論が展開されてきましたが、私はつまるところ、今回の広告放送中止事件およびホームステイ拒否事件の元凶は、砂尾町長自身の、こうした公職の立場を利用して私欲を追求するという就任当初からの不純な意図・動機そのものであり、これら事件はそこから必然的に引き起こされるべくしておきたものであるという一言につきると確信しております。添付の神戸新聞紙上での就任時の抱負、及びその後の諸経過がこのことを如実に物語っています。

こうした砂尾町長自身の個人的利害関係がなければ、全国の自治体に知られた斎藤前町長のような前任者の行政姿勢にならって、町民の福祉・公共の利益のために、公僕として公平な町行政に専念されたことであろうし、また私たち家族も村八分的な差別・屈辱を受けなかったであろうと思うにつけ、一町民として残念・無念に思う次第です。行政私物化の芽は、取り返しがつかなくなる前に摘み取られなければなりません。

                  平成11年11月5日
                   
                    山 口 薫


添付資料: 神戸新聞、平成 7 年7月12日(水)付け記事(再)

参考資料: 読売新聞、平成11年9月23日(木)付け記事
      
神戸新聞、平成11年9月23日(木)付け記事