兵庫県津名郡五色町◯◯◯◯
原告 山口 薫
神戸市中央区東川崎町一丁目三番三号
神戸ハーバーランドセンターピル10階
神戸合同法律事務所
(電話 078−◯◯◯-◯◯◯◯)
(ファックス 078−◯◯◯-◯◯◯◯)
右原告訴訟代理人
弁護士 富崎 定邦
同 前田 修
同 高橋 敬
同 田申 秀雄
同 松山 秀樹
同 小泉 伸夫
兵庫県津名郡五色町都志二○七 五色町役場
被告 五色町
代表者町長 砂尾 治
損害賠償等請求事件
一 |
被告は原告に対して金一、○○○、○○○円とこれに対する本訴状送達の翌目から支払い済みに至るまで年五分の割合によ金員を支払え。 |
二 |
被告は「淡路五色ケーブルテレビ」において五日にわたり別紙記載の内容により謝罪広告放送をしなければならない。 |
三 | 訴訟費用は被告の負担とする。 |
一、 | 原告は兵庫県津名郡五色町の住民である。 |
二、 | 被告は「淡路五色ケーブルテレビ」の名称で放送事業を営み、一九九五年二月ころから広告放送をしており、広く町民に利用させている。 |
三、 |
原告は「五色・淡路未来フオーラム」(目時一九九七年八月三一日、場所五色町民センター)の開催を企画し、一九九七年八月二六日被告に対して右集会開催のお知らせを「淡路五色ケーブルテレピ」による広告放送を同日から同月三○目までの五日間行うよう申し込んだところ、被告がこれを承諾したので、即目原告は広告料五千円を払い込んだ。 |
四、 | そして、同月二六目午後五時頃には一旦右集会開催お知らせの広告放送をしながら、被告は同目午後六時頃になって突然一方的に原告に対して右テレビによる広告放送を停止する旨の通知をし、その後の広告放送はなされなかった。 |
五、 |
被告が右放送停止の理由とするのは被告五色町情報センター広告放送取扱要綱第二条一五号に該当するからというものである。右要綱は被告の広告放送の取扱について必要な事項を定めたものであるが、その第二条は「広告放送にあたっては、放送としての晶位を損なわないよう、一般社会常識にのっとり、町民サイドに立って放送の可否を決定する。基本的には、次の各号に該当する場合は放送をしない。」として、「政治活動及び宗教活動に関係あるもの」「風俗営業に関するもの及びこれに類するもの」「公の秩序又は善良な風俗に反するもの」など一五項目を定め、第一五号に「その他放送することが不適当と町長がみとめるもの」との定めがある。 |
六、 | 被告は右放送停止の理由につき右要綱第二条一五号というだけで、原告に対して「放送することが不適当」とする具体的な説明はなされなかった。 ただ、マスコミ報道によれば、町長が「一方的意見、立場を押しつけるもの」と判断したことによると伝えられている。 |
七、 |
しかしながら、企画された右集会は被告五色町に搬入された建設残土から環境基準を上回るヒ素が検出された問題につきその対処を考える趣旨のものであり、被告町長も参加する予定であったし又現に参加しているのであって、集会そのものが「一方的意見、立場を押しつけるもの」ではなかった。 原告が申し込んだ広告内容もテレピ画面に前記集会を案内するものに過ぎず、しかも被告担当者とも相談して決められた左記の内容(但し、横書き)のものであって「一方的意見、立場を押しつけるもの」ではなかった。 |
記 第一回五色・淡路未来フオーラム 以上 |
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八、 |
そもそも憲法第二一条は表現の自由、集会の自由を保障しているが、これらの自由は民主主義を維持していく上で根幹となる極めて重要な人権であり、公共施設の利用については、その管理目的からくる規制はあり得るものの、その規制はこれらの人権を不当に侵害しないようになされなければならない。 この憲法の趣旨を受けて、地方自治法第二西四条も「公の施設」について「正当な理由がない限り」住民に利用を拒否してはならない旨規定している。 前記要綱第二条一五号が町長の恣意的判断を許す趣旨の規定であれば右憲法の条項、地方自治法の条項に違反して無効といわなければならず、仮に有効な規定とするのであれば町長の恣意的判断は許されず限定的に解釈されなければならないところ、町長が本件放送を不適当と判断してなした放送中止の所為はいずれにしても原告の表現の自由を侵す債務不履行であり、また不法行為を構成するものである。 |
九、 |
右放送中止により原告が企画した右集会は予定予測された参加者がなく且つ予定された討議が尽くされない等所期の目的を達成し得なかった。 加えて、当時被告五色町主催でロシア共和国ハバロフスクの少年少女民族舞踏団「ラーダスチ」の公演が行われるに際して被告の要請により原告がホームステイを引き受けていたのであるが、右放送中止を原告に通知した直後被告は一方的に正当な理由もなく原告方でのホームステイを断って原告の被告町公式イベント参加を拒否するなど、被告町政進展に原告が反対しているかの如き印象を表明して原告に対する村八分的扱いもしている。 そのために、原告の蒙った精神的苦痛は多大であり、金銭に見積もると金一○○万円を下らない。 |
十、 | よって、原告は被告に対して請求の趣旨のとおり慰謝料の支払と謝罪広告を求めるため本訴に及んだ。 |
一、甲第一号証 | 広告料領収書 |
二、甲第二号証 | 「第一回五色・淡路未来フオーラム開催のお知らせ」と題するチラシ |
三、甲第三号証 | 「淡路五色ケーブルテレビにおける広告放送の停止について」と題する通知書 |
四、甲第四号証 | 五色町情報センター広告放送取扱要綱 |
五、甲第五号証一、二 | 内容証明郵便、同配達証明書 |
一、甲号各証写し 各一通
二、委任状 一通
一九九七年十一月四日
右原告訴訟代理人
弁護士 宮崎 定邦
同 前田 修
同 高橋 敬
同 田中 秀雄
同 松山 秀樹
同 小泉 伸夫
山 口 薫 殿
一九九七年 月 日
兵庫県津名郡五色町
町 長 砂 尾 治
一九九七年八月三一日五色町民センターで開催されました「第一回五色・淡路未来フオーラム」(テーマ黒い土と汚染間題を考える)につき、貴殿からの当町営の淡路五色ケーブルテレピによる広告放送申し込みを貴殿から同年八月二五目受けて一旦放映したにもかかわらず、約一時間後に当町情報センター広告放送取扱要綱第二条一五号(その他放送することが不適当と町長が認めるもの)に該当するとして放送を一方的に停止しました。
しかしながら、当町の右処置は貴殿の表現の自由を侵害した違憲違法のものであり、貴殿及び町民の皆様に対して大変ご迷惑をお掛けしました。
ここに衰心よりお詫び申し上げます。
以上